PRESENT

春の詩 (2025)       Acryl / SSM
春の詩 (2025)       Acryl / SSM

278th Exhibition

── 春のロンド ──

第3回 増田泰子展

2025年 03月28日 (金) 〜 04月14日 (月)

※ 04月05日(土)・12日(土) 作家在廊

 

柔らかな風の中で、春の音を聞く少女、人知れぬ願いを胸に、星夜にたたずむ少女、止められた時を見据える、花飾りの少女……、魅惑の女性像が奏でる艶やかなロンドは、私達に謎めく芳香をもたらして止まない。待望の第3回展、沈黙の時空から響き出す麗しき詩の数々を。

願い (2020ー25)      Acryl / 10F
願い (2020ー25)      Acryl / 10F

増田 泰子 Masuda Yasuko (1969〜)

 

 時に憂いに沈む眼差しで、時に何処か放心したような瞳で、或いはうつむいて閉じた瞼の中で、少女達はそれぞれに何かを見据えている。この静かなたたずまいを見せる女性像の、一見は押し並べて柔らかな表情を浮かべる顔容が、実は多様な情感を秘めたその瞳に収斂される事を知る時、見る者はいつしかその視線の行先を想う。その不可思議な眼差しの先に在るもの、止められた時の

狭間に彼女達の見据える何か、そしてその何かが彼女達

の心奥にもたらすであろうもの、そんな直接には描かれ

ずともそこはかとなく喚起される連想が、見る者の中に

豊かなファンタジーと、尽きないロマンスを醸成する。

 増田泰子──不思議な魅惑を放つ女性像で、近年更な

る注目を集める新鋭作家。キャンバスにイタリア漆喰の

下地を施し、その上にアクリル絵具で描画する独自の技

法は、今までのアクリル表現にはなかった厚みのあるテ

クスチャーを可能とし、そこに描き出される独特の女性

像は、何処か古典絵画を彷彿とさせるような気品を湛え

る。同時に、古典にはなかった新たなエッセンスをまと

いつつ、時に謎めいた様相を見せる特有の画風は、現代

のロマネスクとも言える豊かな情趣を放って止まない。

 早くから積極的な個展活動を展開し、都内を中心に各

地で意欲的な展示を重ねる中で、その静謐な魅力を放つ

特異な人物表現は、時流に左右されない一貫した制作姿

勢と相俟って、着実に支持者・共感者を増やして来た。

現代の美術シーンで、女性像をメインとする人物画は数

多いが、そのほとんどは上辺だけの美麗を追い求めた、

いわゆる「美人画」に過ぎない。そのような現況下、世

に流行する虚飾的な女性像とは一線を画した、どの流れ

にも属さない独創的な絵画制作は、いよいよ注目の輪を

広げてゆく事だろう。人物表現の本質を体現する作家で

あり、真のオリジナリティーを追求する数少ない画家の

一人として、以降もより一層の活躍が期待されている。